分かってた

この舟はどこにも辿り着かない

それでも泥を蹴って乗り込んだんだ

このまま沼に沈むのがたまらなく嫌で

未来を裏切る別の未来を想像したくて


一夜目、記憶が瞼を焼き切る

剥き出しの目は見続ける

避けることの出来ない景色

色の無い空と水面


十一夜目、舟は廻る

葉っぱのように

舟に糧は無く

あるのは手足

指に噛みつき

久しぶりに見た色は赤


毎朝同じ風景が見える

毎晩同じ風景しか見えない

朝と夜に切れ目は無く

奪い去る者の小さな手が雪のように降る





















百一夜目、瞼がほしい

狂気の果てに指は無くなり

痩せ細り、腹だけが残る

黒く醜く圧縮され、動くこともできない

どこにも辿り着かない小舟

未来はそのまま現実になった

闇に落ち窪んだ目

消し炭のような唇

骨に張り付く皮が声にならない悲鳴を上げる

とっくに死んでいるはずだ

それでも、剥き出しの苦痛が脳を駈る

魂すらどこにも行けない


千一夜目、薄く削がれる私が消滅するまで





2010/10/26 UP


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